ヘビにちなむ植物を調べてみました!

2025.01.04

 2025年の干支はヘビ!博物館の自然館では干支をテーマにしたトピックス展示「ヘビ・蛇・巳年」を開催しています(2025年1月26日まで開催)。

 

トピックス展示コーナー

 

 植物分野からはヘビノネゴザ,ジャケツイバラ,ヘビイチゴ,ヒロハヘビノボラズの標本を出展しました。ヘビノネゴザ(蛇の寝茣蓙)は「群生する葉の間にヘビがとぐろをまいていることがあるため」,ジャケツイバラ(蛇結茨)は「棘のある枝が,ヘビのようにからみあって伸びること」,ヘビイチゴ(蛇苺)は「ヘビがいるような環境に生育する,あるいは果実を食べる動物をヘビが狙うこと」が和名の由来になっています。この3種はいずれも三浦半島でみられます。

 

ヘビノネゴザ

 

ジャケツイバラ

 

 

ヘビイチゴ

 

 また,ヒロハヘビノボラズ(広葉蛇上らず)は神奈川県内に分布していないのですが,「ヘビが上られないような棘が枝にある」という由来が個人的に面白く感じたため紹介しています。

 今回の展示にあたり,ヘビにちなむ名前(和名,英名など)をもつ植物を探し,その由来を①植物の外見,②植物の生育環境,③ヘビの行動,④ヘビ毒への効能の4つのパターンに分けてみたので紹介します。

 

①植物の外見:ヘビの姿を思わせる形や模様をもつことが由来

・ジャゴケ(ジャゴケ科)三浦半島に生育

・ヘビゴケ(シッポゴケ科)

・ヒメハナワラビ(別名 ヘビノシタ)(ハナヤスリ科)

・タキミシダ(別名 ヘビノサジ)(イノモトソウ科)三浦半島に生育

・ジャノメアカマツ(マツ科)栽培種

・オニバス(スイレン科)(学名はEuryale feroxで,Euryaleはギリシャ神話に登場する髪の毛が蛇の怪物が由来)

・ジャノヒゲ(クサスギカズラ科)三浦半島に生育

・アツバチトセラン,サンセベリア(英名snake plant)(クサスギカズラ科)栽培種

・ヘビイモ(サトイモ科)栽培種

・マムシグサ(サトイモ科)三浦半島にはムラサキマムシグサ(別名カントウマムシグサ)が生育

・カラスウリ(英名Japanese snake gourd)(ウリ科)三浦半島に生育

・ヘビウリ(ウリ科)栽培種

・ジャケツイバラ(マメ科)三浦半島に生育

・ジャノメギク(キク科)栽培種

 

②植物の生育環境:ヘビが出そうな場所に生えていることが由来

・ヘビノネゴザ(メシダ科)三浦半島に生育 ③にも該当

・ジャヤナギ(ヤナギ科)三浦半島に生育 ①にも該当

・ウワバミソウ(イラクサ科)三浦半島に生育

・ヘビイチゴ(バラ科)三浦半島に生育 ③にも該当

・ジャニンジン(アブラナ科)三浦半島に生育

 

③ヘビの行動:ヘビができる、あるいはできない行動を想起させることが由来

・ヘビノボラズ(メギ科)

 

④ヘビ毒への効用:毒蛇(ハブ)に咬まれたときに薬として利用することが由来

・ハブソウ(マメ科)栽培種,帰化植物

 

パターン分けの図

 

 冒頭でも触れたヘビノネゴザについては,文献に基づいてパターン②の植物の生育環境が和名の由来に結びつくものとしました。ただし,本種を野外で見ると株(葉)の上にとぐろをまいている姿を想起させます。パターン③のヘビの行動も当てはまるのではないかと思っています。

 今回のパターン分けはざっくりとしたものですが,植物和名の由来については様々な図書で解説されていますので,興味のある方は調べてみてはいかがでしょうか。人のくらし,文化,歴史に関連するものもあり,植物への親しみがより湧くかもしれません。(植物学担当:山本)

 

参考

『世界有用植物辞典』(平凡社)堀田満・緒方健・新田あや・星川清親・柳宗民・山崎耕宇編.1989.

『神奈川県植物誌2018電子版』(神奈川県植物誌調査会)神奈川県植物誌調査会編.2018.

米倉浩司・梶田忠.2003- 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList),http://ylist.info

 

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