学芸員自然と歴史のたより「横須賀製鉄所の魅力」

2016.04.27

 昨年は横須賀製鉄所(造船所)150周年という事で、当館でも特別展示を行いました。特別展示は、常設展示室の一部更新をかねて行い、近代史の常設展示が補強されました。近代史の展示コーナーでは、これまで以上に時間をかけて見学してくださる来館者の皆様が増えたように思います。

 横須賀製鉄所は、製鉄所と言う名を持つものの、おもに造船と船の修理をおこなっていた施設で、慶応元(1865)年に起工して明治4(1871)年に横須賀造船所と名を変えました。開国後の日本では、江戸の近くで大きな船を修理できる施設が必要となり、江戸幕府は、世界の技術状況を研究したうえで、その建設をフランスへ委託し、場所も横須賀に定められました。建設を託されたフランス人たちは、横須賀製鉄所のことをArsenal d’Iokosuka (アルスナル ディオコスカ)と呼びました。

 横須賀製鉄所は日本への西洋技術移転と工業力強化の拠点と位置付けられていました。ここでは、船以外にも富岡製糸場や生野鉱山などの各地の官営工場の機械を生産するなどして、日本の近代化を大きく支えました。世界遺産である富岡製糸場の建築も横須賀製鉄所が設計したものです。(近代建築史担当 菊地)

横須賀港一覧絵図(明治12年官許、当館蔵)

横須賀造船所の観光用としてつくられた当時の絵図