学芸員自然と歴史のたより「葉山-嶺岡帯:三浦・房総半島で最も古い岩石と地層」

2016.10.27

 三浦半島と房総半島には、同じ時代につくられた類似する岩石や地層が分布しています。両半島の大地のほとんどは新生代新第三紀以降(2,300万年前以降)の地層でできていますが、その中でも最も古い時代の地層や岩石が見られる地域が「葉山-嶺岡帯」です(図1)。

 

図1.葉山-嶺岡帯の位置.

 

 葉山-嶺岡帯の特徴の1つは、玄武岩や蛇紋岩といった岩石が見られることです。玄武岩の枕状溶岩は横須賀市平作 (図2) や,千葉県鴨川市太海 (図3) で見られます。これら玄武岩は5,000万~4,000万年前にできたものが多く、平作の枕状溶岩は三浦半島で最も古い岩石です。蛇紋岩は横須賀市小矢部 (JR衣笠駅裏) や千葉県鋸南町下佐久間で観察できます。これらの岩石は、かつて海洋プレートの一部をつくっていたと考えられています。

図2.A: 横須賀市平作の玄武岩 (枕状溶岩).B: 枕状溶岩の拡大.

図3.千葉県鴨川市太海の玄武岩 (枕状溶岩).

 

 葉山-嶺岡帯には、特徴的な凝灰岩 (火山の噴出物が降り積もって固まった岩石) も点在しています。これらの凝灰岩は新鮮な部分は濃い緑色ですが,すぐに風化して褐色になります。また、白色の鉱物脈が入っています。千葉県鴨川市鴨川漁港の荒島 (図4) や、横須賀市野比海岸、横須賀市立石 (図5) などで見られます。これらの凝灰岩のできた時代はよくわかっていませんが、荒島からは1,400万年前よりも古い時代に生息していた石灰質ナノ化石が報告されています。

図4.千葉県鴨川市鴨川漁港の荒島.凝灰岩からできている.

図5.A: 横須賀市立石.B: 立石の凝灰岩.白い鉱物脈が見える.

 

 葉山-嶺岡帯には地すべりによってできた緩やかな地形や、活断層が見られることも特徴です。横須賀市では葉山帯に沿って「武山断層」「北武断層」「衣笠断層」といった活断層が走っています。房総半島の嶺岡帯でも活断層の存在が推定されましたが、近年の調査では活断層は存在しないか、存在しても活動度は低いとされています。

 葉山-嶺岡帯の主体は嶺岡層群や保田層群、葉山層群といった地層ですが、断層で複雑に変形していて、年代を決定する化石もあまり見つかりません。この地域の大地の生い立ちを明らかにするためには、今後も詳しい調査が必要です。(地球科学担当 柴田)

 

もっと詳しく知りたい方は

高橋直樹・柴田健一郎・平田大二・新井田秀一 2016. 葉山-嶺岡帯トラバース. 地質学雑誌, 122(8): 375-395.

https://www.jstage.jst.go.jp/article/geosoc/122/8/122_2016.0035/_article/-char/ja/

 

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