学芸員自然と歴史のたより「観音崎からアケビガイの化石を発見!」

2019.04.02

 三浦半島は,海底から湧き出すメタンを栄養源とするシロウリガイ類の化石産地として有名で,葉山層群(約1,500万年前)や池子層(約400万年前)からそれらの化石が見つかります。特に逗子市池子周辺の池子層からは,シロウリガイ類の化石がたくさん見つかっています。横須賀市内では,湘南鷹取の宅地造成中に切り出された池子層の岩石からシロウリガイ類の化石が見つかったという記録がありますが,詳しい産地などはわかっていません。

 今回,横須賀市観音崎の池子層から,シロウリガイのなかまであるアケビガイの化石が見つかりました。この化石は産状が確認され,池子層から産出した横須賀市内初のシロウリガイ類化石となります。化石は左殻1点で,スコリア凝灰岩に挟まれる炭酸塩コンクリーションから見つかりました。化石の産状や周辺の地層の観察からは,アケビガイは生息場所からやや運搬されて埋没し,化石になったと考えられます。現生のアケビガイは水深180~710 mに生息しています。池子層ができた環境も,水深180~710 mか,それよりやや深い環境だったと推測されます。

 アケビガイの化石は,観音崎園地の海岸,つまり皆さんがバーベキューをしているすぐ近くの岩場から見つかりました。これまで多くの人がこの岩場を訪れていたと思われますが,ほとんどの人が化石に気づかなかったようです。身近なところにも大きな発見がありますね。(地球科学担当:柴田)

 

観音崎から見つかったアケビガイ化石.YCM-GP1974.

 

アケビガイ化石の産状.三浦半島活断層調査会撮影.

 

もっと詳しく知りたい方は

柴田健一郎・倉持卓司・鈴木 進 2019. 横須賀市観音崎に分布する鮮新統池子層の堆積環境とオトヒメハマグリ科化石. 横須賀市博研報 (自然), (66): 1-9.

 

 

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