平和中央公園のクロマツ【学芸員自然と歴史のたより】

2021.05.12
博物館に隣接する平和中央公園には、クロマツ(マツ科)が植栽されています。

公園に植栽されているクロマツ

  今(4〜6月)は花の時期なので観察してみましょう。 今年伸びた新しい枝の先端に赤い丸いものが付いています。これは、クロマツの雌花で、いずれ「松ぼっくり」になるものです。よく見てみると、鱗のようなものが並んでいます。これを鱗片(りんぺん)といい、2つの胚珠(はいしゅ:いずれ種子になる)がついています。  

雌花

雌花

  新しい枝の基部には、たくさんの雄花がついています。こちらも鱗片が集まった構造をしています。  

雄花

  マツの枝を揺らすと、花粉が飛ぶ様子がわかります。マツは、昆虫などの動物ではなく、風によって花粉が運ばれる風媒花(ふうばいか)です。マツの花粉には、左右に気嚢(きのう)と呼ばれる風船のような袋があります。この袋で、マツの花粉は遠くまで飛ぶことができます。雄花の花粉が風に運ばれ、雌花の柱頭に付くと受粉します。受粉から1年以上かけて受精し、そこからさらに時間をかけて果実(松ぼっくり)が熟します。花が咲いている枝の下には、昨年に花を咲かせた若い果実(松ぼっくり)が見られます。よく探してみると、2年前に熟した果実(松ぼっくり)も残っています。今の時期は、「今年の花」、「1年目の果実」、「2年目の果実」が観察できます。  

若い果実(松ぼっくり)

 

雄花と1年前の若い松ぼっくり(奥の松ぼっくりは2年前に熟したもの)

  また、クロマツの花を観察していると、白い泡がついている枝をよく見かけます。これはマツアワフキが出した泡で、中には小さな幼虫がいます。平和中央公園の北側「展望広場」付近のクロマツは観察しやすいのでおすすめです。  

白い泡がついている枝

  博物館では、定期的に平和中央公園の動植物調査を実施しております。活動に興味のある方は、博物館までお知らせください。(植物学担当:山本)   「学芸員自然と歴史のたより」はメールマガジンでも配信しています。