学芸員の柴田が地層に関する論文を発表しました
学芸員の柴田と千葉大学、米国およびインドネシアの大学ならびに米国の博物館の研究グループによる地層について論文が出版されました。この研究は、米国ユタ州の地層を対象に行われ、その成果は堆積地質学の専門誌である『Sedimentary Geology』(英文)に2025年1月22日付けで掲載されました。
■論文の概要
この研究は、アメリカ・ユタ州南西部の三畳紀後期(約2億2000万年前)の地層であるチンレー層を対象に行われました。チンレー層はおもに河川によってつくられた地層です。地層の観察、および岩石学的な分析に基づいて、三畳紀の河川の流域を復元しました。
地層の厚さの計測により、地層ができた当時の河川の流量が時間とともに減少したこと、調査地より上流にある流域の長さが最大で260〜640 kmであったことを明らかにしました。ここで、流域の長さを計算する方法を新しく提案しました。
礫岩と砂岩の組成や、泥岩に含まれる粘土鉱物の組成の分析からは、気候の乾燥化や火山活動の活発化が起こったことなどが明らかになりました。これらの岩石学的な特徴は、調査地の東方300〜400kmに位置するチンレー層の組成とはわずかに異なり、これらの地域には2つの異なる流域があったことが推定されます。
流域の長さが最大で260〜640 kmであることや、岩石学的な特徴から、ユタ州南西部のチンレー層の供給源が主にアリゾナ州南部のモゴヨン高地とカリフォルニア州のコルディレラ火山弧であることが明らかになりました。従来の研究からは供給源が調査地から1,600 km離れた東メキシコ弧にまで達すると考えられてきましたが、今回の研究結果はそのような遠方から土砂が運搬された可能性が低いことを示しています。
■発表論文
Shibata K., Adhiperdana B. G., Ito M., Milner A. R. C., Lockley M. G. 2025. Paleohydrological features and detrital compositions of the Late Triassic Chinle Formation in southwestern Utah, U.S.A. Sedimentary Geology, 477, 106820, https://doi.org/10.1016/j.sedgeo.2025.106820.
こちらのリンクから論文を閲覧・ダウンロードできます。
(2025年3月28日まで。それ以降は論文の購入、または研究機関等からのアクセスが必要です。)