植物学

植物学担当:山本 薫

研究内容

三浦半島の植物に関する調査研究

三浦半島の植物相を把握するための調査

『神奈川県植物誌2018』の刊行のため,地域の方と協力して標本を収集し,三浦半島エリアのデータをとりまとめました。
また,分担執筆としてオシダ属を担当しました。その後,『神奈川県レッドデータブック植物編2022』刊行のため,
「神奈川県レッドリスト選定・評価委員会植物・菌類部会」の委員を務めました。

現在も三浦半島の植物相調査を続けているほか,絶滅の危機に瀕している植物の調査や域外保全にも取り組んでいます。

三浦半島における新発見や再発見,新産地の記録

市民の協力を得ながら,三浦半島では絶滅したと考えられていた種の再発見や,三浦半島初記録となる外来植物の確認を進め,随時発表しています。

三浦半島の植物の多様性・独自性に関する調査研究

三浦半島の植物の独自性や多様性の起源を探ることを目的として,山地と島嶼の植物の交雑起源の可能性について検証しています。三浦半島では,ヤマアジサイ(山地性)とガクアジサイ(島嶼性)の推定雑種を確認しました。この他,クサギ(クサギ×シマクサギ)やムラサキシキブ(ムラサキシキブ×オオムラサキシキブ)についても検討しています。

シダ植物に関する調査研究

三浦半島地域も含めたシダ植物の調査

近年,三浦半島でも確認されている南方系のナチシダやイヌケホシダなどの分布調査に着手しています。
また,マツバラン,ホウライシダ,タマシダといった園芸逸出の可能性がある種について,野外において自生由来の株と混在していないか,
三浦半島外(県外)も含めて調べています。温暖化が植物の分布に与える影響や,保全について考察するテーマです。

シダの生殖様式に関する研究

分布が限定的なハチジョウベニシダ(有性生殖をする)と,それに近縁で広域に分布するベニシダ(無配生殖をする)の混生集団(三浦半島,伊豆大島)について継続的に調査しています。近縁な無配生殖種が広範囲に分布する中で、三浦半島を含む特定の場所ではハチジョウベニシダが優占しその集団が長期維持されています。有性生殖種が維持される集団の環境や分布を決定する要因の解明は、有性生殖の有利性にもアプローチできると考えています。

その他の調査・研究

植物と昆虫に関するテーマ(ポリネーターなど)や,伊豆諸島~三浦半島の植物を対象にしたテーマについて共同研究をさせていただいております。さらに,横須賀の歴史(郷土史)と地域の植物学の進展との関係についても調査を進めています。

文献一覧

担当学芸員(山本 薫)に関わる文献

【論文・書籍等での発表】

早川宗志・山本 薫

2024. ハマネナシカズラ(ヒルガオ科)の東限集団.植物研究雑誌.99 (3): 203–205

Chie Tsutsumi, Kaoru Yamamoto and Satoshi Kakishima

2024. Genetic Diversity and Origin of Cultivation in Angelica keiskei (Apiaceae). Bull. Natl. Mus. Nat. Sci., Ser. B, 50 (3): 121–130,

Kaoru Yamamoto, Toshio Oka, Atsushi Ebihara, Sadamu Matsumoto, Noriaki Murakami, Kiyotaka Hori

2024. Dryopteris ×makabensis (Dryopteridaceae), a New Hybrid between Dryopteris caudipinna and D. tokyoensis. Acta Phytotaxonomica et Geobotanica. 75 (1): 1–9

山本 薫・高橋徹男

2024.三浦半島で確認されたヨシススキ(イネ科).横須賀市博研報 (自然), (71): 29–30 (2024)

山本 薫・藤井明広

2024.植物学者牧野富太郎博士からの手紙.横須賀市博研報(人文),(68):33–63.

山本 薫

2023.57年振りに発見された三浦半島産ハイネズJuniperus conferta Parl. (ヒノキ科). 横須賀市博研報 (自然), (70): 87–88.

田中徳久・勝山輝男・秋山幸也・大西 亘・田村 淳・山本 薫・石田祐子

2022. 維管束植物. 神奈川県環境農政局緑政部自然環境保全課・神奈川県立生命の星・地球博物館編, 神奈川県レッドデータブック 2022植物編: 44–326.

山本 薫・辻 功

2021.横須賀市の復田棚田に出現したミズオオバコ.横須賀市博研報(自然),(68):35–36.

山本 薫・岩浪 創

2020.31年振りに発見されたタキミシダ.横須賀市博研報 (自然), (67): 39.

山本 薫・鵜沢美穂子・内舩俊樹

2019.馬堀自然教育園のシダ類および蘚苔類.横須賀市博研報 (自然), (66): 23–28.

【学術会議等での発表】

Kaoru Yamamoto, Satoshi Kakishima, Chie Tsutsumi.

2024. Hybridization of mountain-growing Hydrangea serrata and island-growing Hydrangea macrophylla in peninsular regions. XX International Botanical Congress. IFEMA Madrid.

山本 薫・柿嶋 聡・山住一郎・岩崎貴也・海老原淳・堤 千絵

2024.ハチジョウベニシダならびにホコザキベニシダ(オシダ科)の遺伝構造.第23回日本植物分類学会仙台大会.東北大学.

堤 千絵・山本 薫・柿嶋聡

2024.アシタバの遺伝的分化と栽培起源.第23回日本植物分類学会仙台大会.東北大学.

山本 薫・柿嶋 聡・長谷川秀三・堤 千絵

2023. 三浦半島にみられるヤマアジサイとガクアジサイの交雑. 日本植物分類学会第22回大会. 千葉大学. オンライン.

棚橋優花・渡邊謙太・山本 薫・村上哲明・加藤英寿

2022. 広域分布種サクラソウ科ハマボッスの花形態とポリネーターの関係. 日本植物学会 第86回大会. 京都大学.