文献史学 − 研究内容
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(1)他地域を意識した研究
横須賀市・三浦半島には、中世においては鎌倉幕府の重鎮である三浦一族、近世においては日本開国の起点となったペリー来航、近現代においては横須賀製鉄所や大日本帝国海軍の存在など、横須賀市・三浦半島の研究だけでは完結し得ない豊かな歴史を持っています。こうした横須賀市・三浦半島の歴史を「地域史」として細かに検討をしていくのはもちろん、他地域とのつながりを意識して「歴史学」研究全体の中で位置づける様な研究を心掛けたいと思っています。
(2)近世における旗本・村落史研究
横須賀市の歴史を考える上で、浦賀奉行所のトップである「浦賀奉行」や日本の近代化に重要な役割を果たした「小栗上野介」の存在など、徳川家の直臣である「旗本」の果たした役割は重要です。しかしながら、全国的にみても旗本家の史料群は希少です。そのため、横須賀市・三浦半島に関連した旗本を中心としつつも、視野広く各地の旗本についても検討し、彼らが幕政や地域との関係で果たした役割について研究したいと思います。
また一方で、江戸時代の人口の80%以上は「百姓」身分であったといわれており、実は社会の大部分を構成するのは「百姓」でした。浦賀奉行所や海防により出張してきている武士が常駐しているという特質があるものの、横須賀市・三浦半島も例外ではありません。よって、支配者である「旗本」(武士)のみならず、「庶民」の視点からも横須賀市・三浦半島における村の歴史を明らかにしていきたいと考えています。
(3)歴史学研究の裾野を広げる
「歴史学」では、なるべく研究対象とする時代に作成された記録に基づいて、実証的に歴史を明らかにしようとするのが基本です。そして、おおむね明治・大正期頃までは、いわゆる「くずし字」で記された古文書から歴史を明らかにすることになります。とりわけ明治時代以前の事柄について、本当に研究をしようと思った場合には、「くずし字」読解のスキルが必要不可欠となります。
こうした「歴史学」に関する知識や経験、方法論を習得するには、大学の「史学科」(名称は様々)にでも入学しなければ難しいのが現状だと思います。もちろん、時代劇や小説、ゲームなどに影響されて「歴史」に関心を持つ方が多いのは喜ばしいことですが、史料を扱わずにイメージや希望的観測で歴史について言及することと、「歴史学」とは全くの別物です。
そこで、私が担当する講座では、なるべく初心者向けの古文書講座を実施し、「歴史学」の裾野を広げていきたいと思っています。特に中高生や大学生を対象として、古文書の読み方や調査・研究方法などについて継続的に学べる仕組みを作りたいとも考えています。
(文献史学担当:藤井明広)